盛岡地方裁判所 平成4年(わ)74号 判決 1992年12月07日
本店所在地
岩手県釜石市両石町第四地割字水海二六番の二
株式会社
八幡建設
右代表者代表取締役
八幡義次
(但し、弁論終結時の同代表者 八幡康一)
本籍
岩手県釜石市橋野町第三二地割三八番地
住居
岩手県釜石市千鳥町一丁目六番二〇号
会社役員
八幡康一
昭和七年八月四日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官柏村隆幸出席のうえ審理して、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社八幡建設を罰金一、六〇〇万円に、同八幡康一を懲役一年二月に処する。
被告人八幡康一に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社八幡建設は、岩手県釜石市両石町第四地割字水海二六番の二に本店を置き、一般建築請負業等を目的とする資本金五、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人八幡康一は、被告人会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人八幡康一は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、完成工事収入の一部を除外し、架空労務費を計上するなどの不正な方法により所得を秘匿した上
第一 昭和六三年七月一日から平成元年六月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が四、三一四万三、五〇一円であったにもかかわらず、平成元年八月三一日、岩手県釜石市天神町四番九号所在の所轄釜石税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一、五二三万二、九四三円で、これに対する法人税額が四〇〇万三、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一、五七二万五、七〇〇円と右申告税額との差額一、一七二万二、六〇〇円を免れ
第二 平成元年七月一日から同二年六月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が七、五〇三万五、八九八円であつたにもかかわらず、同二年八月二九日、前記釜石税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二、四六八万五、八九五円で、これに対する法人税額が七二二万六、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二、七三五万三、一〇〇円と右申告税額との差額二、〇一二万七、〇〇〇円を免れ
第三 平成二年七月一日から同三年六月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億七〇三万七、六一三円であったにもかかわらず、同三年八月三一日、前記釜石税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四、六〇三万八三八円で、これに対する法人税額が一、四三四万九、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三、七二二万七、三〇〇円と右申告税額との差額二、二八七万七、七〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示の全事実関係につき
一 被告人(兼被告人会社代表者)八幡康一の
(1) 当公判廷における供述
(2) 検察官に対する各供述調書
(3) 作成にかかる各上申書
一 北湯口信子作成の上申書
一 北湯口信子の大蔵事務官に対する質問てん末書一五通(平成三年九月一〇日付、同月一一日付、同月一二日付、同月一三日付、同月一八日付、同月一九日付、同年一〇月二二日付二通、同年一一月二七日付、同月二九日付、同年一二月一七日付、平成四年一月二七日付二通、同月二八日付二通、同月二九日付三通、同月三〇日付三通、同月三一日付、同年二月一日付第二回とあるもの、同月二六日付及び同年三月三日付のもの)
一 北湯口信子(二通)、下坂洋枝、高清水敬士、伊藤進、菊地君男及び岡本貴福の検察官に対する各供述調書
一 千葉淳子、三上愛子、八幡長栄、合田良雄、佐々木幸悦、芳賀藤一、大町幸平、梁川幸男及び花石キヨミの大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 いずれも大蔵事務官作成の
(1) 脱税額計算書三通
(2) 脱税額計算書説明資料
(3) 完成工事高調査書
(4) 材料仕入調査書
(5) 賞与手当(製造原価)調査書
(6) 労務費調査書
(7) 外注加工費調査書
(8) 経費調査書
(9) 賞与手当(一般管理費)調査書
(10) 公租公課調査書
(11) 受取利息調査書二通
(12) 雑収入調査書
(13) 雑損失調査書
(14) 役員賞与の損金不算入額調査書二通
(15) 減価償却の償却超過額調査書二通
(16) 役員報酬調査書
(17) 計算誤びゅう調査書
一 登記官作成の商業登記簿謄本
判示第一の事実につき
一 北湯口信子の大蔵事務官に対する平成四年二月一四日付各質問てん末書
一 押収してある平成元年六月期分法人税確定申告書(平成四年押一五号の一)
判示第二の事実につき
一 北湯口信子の大蔵事務官に対する平成四年二月一日付質問てん末書(第一回のもの)
一 押収してある平成二年六月期分法人税確定申告書(平成四年押一五号の二)
判示第三の事実につき
一 押収してある平成三年六月期分法人税確定申告書(平成四年押一五号の三)
(法令の適用)
一 被告人八幡康一の判示の各行為は法人税法一五九条一項に該るので、判示の各罪につきいずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年二月に処するが、情状(深く反省し、今後一切こういうことはしない旨を誓っていること、逋脱した税額重加算税はもとより関連する地方税等一億五千万円余を完納していること等を考慮した。)により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
二 被告人会社代表者八幡康一の判示第一ないし第三の各行為はいずれも被告人会社の業務に関してなされたものであるから、被告人会社は同法一六四条一項(一五九条一項)により右各罪につき罰金刑を科せられるべきところ、情状により同法一五九条二項を適用することとするが、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条により右各罪の罰金多額の合算額の範囲内で被告人会社を罰金一、六〇〇万円に処することとする。
三 以上の理由により主文のとおり判決する。
(裁判官 須藤浩克)